事業に失敗して得た経験はやっぱり「当たり前」のことでした、というタイトルなんですが、これがとても難しい。本で読んでいたり、他人の体験談を聞くとしたら「いや、そうはやらないよ」って思うんですが、いざ当事者になったときに、そんなことはすべて吹っ飛んでいて、頭の片隅にもないので片腹痛いのです。
そうやって「いざ自分のこと」になると唐突に危機感がゼロになるわけなのですが、ビジネスセンスや経営スキルを学ぼうとするならば、やっぱり、当たって砕けながら「身に落とし込む」という作業が大切なんだなと感じました。
ことの発端は2024年9月17日(火)、私が1年ほど運営していた事業を閉じる決定を下したことなのですが、今から振り返ってみると、あんまりスマートではない経営者だったなということをヒシヒシと感じます。これがその「自分はきっと違う」みたいな思い込みの罠なのでしょう。
結論から書いてしまうと、プログラミング教室を初めて見たものの需要があると思っていたが、思ったよりも伸び悩んだ末、大赤字の末に撤退を余儀なくされたという感じです。スタートするにあたって日本政策金融公庫からお金を借りるなどの体験もできましたし、テナントを借りてから撤退までのサイクルをやり通せたことは、楽観的に考えても財産になったかなとも前向きに思っています(思いたい)。
1年前の自分に言いたいこと
いまの自分が一年前の自分に対して思うことはいろいろとあるのですが、きっと当時の自分は頑固(ほとんど盲目に近い)でしたので聞き入れなかったと思います。自分で怪我をしないと身に染みてこないというか。「きっと自分は違うはず」ということを、頭のどこかで考えている節があるんだと思います。そして、多くの人はきっとそうなんだと思います。
怪我なんてしないって思っていても、やっぱり怪我はするし、痛い思いをしないと成長しないというのもうなずけます。バイクで事故を起こすまでは危険な運転もしがちなものですが、事故を起こして体に記憶を刻み込むことで安全運転への布石になることだってあるのです。
うまくいく・いかないはおいておくとして、多くの人は「一発で成功する」なんてことは困難であると痛感しました。「きっと自分は違う」なんていう盲信は、本当にただの盲信だったのです!痛い思いをして記憶に焼き付けながら「一発で吹っ飛ばない」ギリギリの線を歩くこと。それこそが起業なのかもしれないと思い至っています。
1.初期費用は最小限にせよ
初期費用は低いことに越したことはありません。初期費用に結構なコストを投下したことが大きな失敗でした。テナントの契約に始まり、務用エアコンの買い替え、家具・備品、パソコンの購入と結構な資金を投下して教室ビジネスを始めました。結論から言うと、投下した初期費用に対して回収は全くできていません。
教室ビジネス(特にプログラミング教室)を始めるならば最初は自宅でやり、パソコンも中古パソコンとモニターを購入するくらいからで十分でした。初期費用的には20分の1程度の10万程度で十分にビジネスとしては立ち上がります。自宅でできない場合はコミュニティスペースなどを借るなどして、可能な限りコストを低くして検討するほうが良かったなと反省しているところです。
2.ランニングコストを低くする
ビジネスを走らせるときは可能な限りランニングコストを低くするべきです。最も注意するべきはテナント代です。売り上げが上がろうが上がらなかろうが必要な費用なので、月々のキャッシュフローを極端に悪化させます。教室ビジネスの例で言えば、開催1回で2000円くらいの変動費に落とし込める方が賢い選択です。
今回テナントを借りたのは会社の事務所としても利用できるから、という言い分もあったのですが結論としては不要でした。直近ではコストを落とすため、コミュニティスペースを借りて授業をするスタイルに変更していました。最初っからこっちにしておけば良かった、と言うのは言うまでもありません。
3.甘い誘惑に乗らない
個人的に最も最悪で、今でも思い出すだけで過去の自分を引っ叩きたくなるほどの選択ミスです。教室ビジネスを立ち上げると、ひっきりなしに意味不明な電話が鳴ります。そのほとんどがSNS広告の勧誘です。「SNS広告はどうされますか?」「あなたの素敵なウェブサイトを拝見してご連絡させていただきました」
これらのセールス電話はさっさと切りましょう。自分の場合は某名古屋の企業の提案にまんまと乗ってしまったわけですが、これについては全く効果はありませんでした。超悪手です。教室ビジネスの基本は地域密着なので、チラシのポスティングが最も有効な手段なのに、正しい判断が全くできていませんでした。それなりの損失です。できるならば1年前の自分を殴り倒しても足りないくらいの失敗です。
上のグループ企業については世間的にもそれなりに問題視されているようで、多くの被害者がいらっしゃるようです。こういった類の話は本当になくなってほしいですね。特に新規でビジネスを開設された方、なかでもサロンや教室ビジネスを始められた方は気を付けてください。
損失額について
さて、プログラミング教室を始めてみましたが実際の収支はどうだったのか?
結論から言うと約500万ほどの赤字でした。かなりの痛手ですね。昨年と今年に予定していた利益の大半が吹っ飛んだ計算になります。初期費用では約100万、先ほどのSNS広告が約200万、1年分の運営維持費が約100万。いや、目が点になりますね。売上は大体30万程度でしたので、どう考えても500万円近くは損した計算になります。
今となってはだいぶ受け止めていますが、よくよく考えると胃が痛くなりますね。精神衛生上はあんまりオススメできません。唯一、今回の判断で正常だったのが「損切」と呼べる程度の支出だったことです。一発で破産に追い込まれるような損ではなく、1~2年で元に戻せるレベルの損失だったことが不幸中の幸いでした。
例えばこれが退職金を全部突っ込んで挙句、手元に残らなくて将来に夢も希望も無くなるような状態だったら、きっと胃が痛い程度では収まらなかったことでしょう。このラインの見極めが難しいのですが、何事も「まだ挽回できる」レベルでの損失で収めることも重要かなと思いました。
もう一つ良かったことは「早期撤退を敢行したこと」だと思います。
これ以上赤字を掘ってもいいことがないと判断したので、可能な限り早めに撤退するようにしました。これにより赤字を最低限に抑え、何とか傷口が広がるのを防ぐことができたと思います。ダラダラと赤字を垂れ流すのは危険ですし「サンクコスト効果」に引っ張られてしまっては元も子もありません。使った金額は元に戻ってこない現実を受けれて、なんとか前に進むために傷口を広げない判断も重要なのかもしれません。